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[レポート]知謝塾×池袋コミカレ公開講座第二回(2013/11/23) 西垣通氏

知謝塾と池袋コミカレによる公開講座第二回は,秋の連休中日の11月23日午後、情報学,IT文明論の第一人者である東京経済大学教授,東京大学名誉教授の西垣通先生を迎えて、盛況のうちに終えることができました。

講演は、最新著『集合知とは何か』をベースにしたもので,3.11をきっかけに広まっている専門知、つまりアカデミアの知に対する一般国民の不信と、それを乗り越える21世紀の新たな知として期待を集める「集合知」の課題と可能性をわかり易く解説してくださいました。
マニアも初心者も楽しめる内容という感じで、特に初めて西垣先生の思想ワールドに接した人にとってみれば、まさに「目から鱗」だったことと思います。

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続く武田塾長との対談では、講演テーマをさらに核心まで踏み込んでの白熱の「知のバーリトゥード」が展開しました。

武田「3.11で『専門知の不信』を招いたのは『専門家の人格的な堕落』。この原因は何か」

西垣「ここで問われているのは科学者や知識人の倫理だが、現状では倫理を問い質す土台が失われつつある。例えば、しばしばメディアでも取り上げられる「剽窃」という問題。組織ぐるみでやっている場合もよくある。本来、学者にとっては進退を賭けた生命線であるはずだが、今や学者も職業人化しており、その意識がだいぶ薄くなっている。また学者同士の論争にしても、かつては学者生命を賭けた真剣勝負だったはずだ。今ではプロレス同然のパフォーマンスということになっている(らしい)。こうなった原因は多々あるが、国立大学の独立行政法人化に象徴される、早急な市場経済の導入も一因だと思う」

武田「専門知の限界が露わになる中、市民や生活者が自発的に創り出す実践知が重要になってきているのでは。大学や企業もこれらを認識し、連携することが求められている。そうしたローカルな実践知を掬い上げるネット、ITの役割は大きい。この観点から最近話題のビッグデータをどう見るか」

西垣「これまでのITは結局、特定の条件のもとでの単線的な、しかも一方向の因果関係を前提としたものだった。一方、現実の人間の論理は無数の因果関係が交互に織りなす複雑系だ。ビッグデータからそういう人間の論理を取り込んだ新たなITのパラダイムに発展する可能性は大いにある、と思う」
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武田「数年前に上梓された著書『スローネット』の主題もその辺りにあるのでは」

西垣「基本的にはイタリアから広まった『スローフード』と同じ考えだ。フランスの思想家ポール・ヴィリリオが速度と人間の幸福について書いているが、ゆったりと落ち着きがある生活、社会、豊かな人生を送るためにITをどう活用するか。例えば、子どもたちが使う教科書を電子書籍にしてタブレット端末を配布するという問題。情報を収受する機能としては、より便利で効果的かもしれない。しかし、その一方、読書には行間を読むという意味があった。本を読みながら自分の頭で考える。知の身体化。この繰り返しを通して深い思考が可能になる。こうした次元の問題も踏まえて再構築されるIT、それがスローネットに込めたイメージと言えようか」
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ともかく重要な問題ばかりである。

(文責:飯塚宏)